工場内の危険を予知し回避するには?KYT (危険予知訓練)とは?
2022年10月20日公開 2022年11月28日更新

目次
工場の仕事では、常に労働災害が起きる危険性が潜んでいます。
誤った作業をすると大事故に繋がりかねない工場の仕事は、危険を予知する対策が必要です。
そのため、工場での労働災害を未然に防ぐために、KYTと呼ばれる「危険予知訓練」を実施しなければいけません。
そこで本記事では、危険予知訓練について、KYTの進め方や他にできる対策などについて紹介します。
最後まで読んで、安全に工場で働くために危険予知訓練の理解を深めておきましょう。
工場に潜んでいる危険とは?
工場にはさまざまな危険が潜んでいます。
重機や機械が多い職場環境では、転倒するだけでも大きな事故につながる可能性もあるでしょう。
そこで、ここでは工場で働いていて起こり得る危険性について、確認していきます。
工場で発生する主な労災の種類は、以下の5つです。
・はさまれや巻き込まれ
・転倒
・墜落や転落
・動作の反動、無理な動作
・切れやこすれ
それぞれ労災の種類別に、詳しく解説していきます。
危険① はさまれ・巻き込まれ
工場で稼働している機械に服や指がはさまれたり、巻き込まれたりすることで発生する労災は多発しています。
自動で稼働している機械に指や身体がはさまれると、大事故に発展する可能性があり非常に危険です。
多くの工場では、はさまれや巻き込まれが起きないように、セーフティ(安全装置)を設置していますが、予測していない範囲で事故が発生してしまいます。
はさまれ・巻き込まれの事故が起きる要因として、ファスナーの締め忘れやボタンの開けっ放しなど服装の乱れから、衣服が機械に巻き込まれて発生することが多いです。
また、工場で発生する事故で最も多いのが「はさまれ・巻き込まれ」事故であり、令和3年度に起きた製造業の労働発生件数では、「はさまれ・巻き込まれ」発生件数は6,501件もありました。
そのため工場では、作業着を正しく着用して、安全対策を徹底することが求められます。
危険② 転倒
工場で起きる労働災害で、はさまれ・巻き込まれの次に多い労働災害は「転倒」事故です。
令和3年度に起きた製造業の労働災害発生件数では、「転倒」発生件数は5,332件と多い結果となりました。
工場は足元にレールや段差があったり、階段の傾斜がきつかったりするため、転倒に十分気をつけなければいけません。
主に体力と集中力が低下している高齢者の転倒事故が多く、歳を重ねるごとに転倒によって大きな労災事故に発展する可能性が高いです。
大きな機械や硬い床に囲まれた工場で転倒すれば、大きな怪我や事故に発展してしまう可能性があるため、足元にも十分注意し働く必要があります。
危険③ 墜落・転落
足元が悪く、機械が多い工場では、転倒と同じく「墜落・転落」事故も多い傾向があります。
令和3年度に起きた製造業の労働災害発生件数では、「墜落・転落」発生件数は2,944件でした。
転倒した場所が高所や階段であれば、大きな労働災害が発生してしまう可能性もあります。
転倒と同じく、年配の作業員ほど墜落・転落事故を起こす可能性が高いため、階段の登り下りや高所での作業の際には十分な注意が必要です。
危険④ 動作の反動・無理な動作
機械を扱う製造業では、機械による「動作の反動・無理な動作」によって、労働災害が発生してしまうことがあります。
令和3年度に起きた製造業の労働災害発生件数では、「動作の反動・無理な動作」での事故発生件数は2,929件でした。
墜落・転倒事故と同じく、動作の反動・無理な動作は同程度の頻度で毎年発生しています。
機械は自動で稼働するため、作業員の意思に反して稼働し続け反発や抵抗力を生むことがあります。
そのため機械を操作する際は、機械の動作範囲に入ったり、規定量以上の量の作動を要求したりしてはいけません。
動作の反動・無理な動作によって労働災害を発生させないために、無理をせずに作業をするようにしましょう。
危険⑤ 切れ・こすれ
工場に設置されている機械は、金属製で鋭利な部分が多いです。
令和3年度に起きた製造業の労働災害発生件数では、「切れ・こすれ」の事故発生件数は2,319件でした。
転倒災害に続いて多い「切れ・こすれ」災害は、些細な動作や移動の際に、簡単に発生してしまいます。
周囲に硬い機械や部品が多い工場では、作業服を着ていても機械や部品で肌を切ってしまうこともあるでしょう。
しかし、「切れ・こすれ」を起きないように対策するには、作業服や作業手袋をしっかり装着して予防するしかありません。
そのため工場で働く際には、周囲の環境にも意識を向け、「切れ・こすれ」などの災害を発生させないように注意して作業してください。
危険予知訓練(KYT)とは?
工場で発生する労働災害の種類を確認した後は、危険予知訓練(KYT)について理解を深めていきましょう。
危険予知訓練はK(危険を)Y(予知する)T(トレーニング)の頭文字を取ったKYTで略される、労働災害を防ぐための対策訓練です。
具体的に危険予知訓練では、危険ポイントと行動目標を指差し、呼称による安全確認をして、作業で生じる危険要因の対策をします。
労働災害を防止するだけでなく、危険予知訓練を通じて作業員の間で職場の安全に関する意識やチームワークが向上するなど、さまざまな効果が期待できるでしょう。
工場で起きる労働災害を未然に防ぐために、危険予知訓練の重要性などについて解説します。
労働災害の未然防止に役立つ
労働災害が起きる原因は、大きく分けて不安全な行動と不安全な状態に分けられます。
不安全な行動とは作業員による災害につながる危険な行動、不安全な状態とは寝不足や集中力不足、悪質な作業環境など危険な状態のことです。
労働災害が起きるほとんどの原因は、不安全な行動からくるヒューマンエラーだといわれています。
そのため、危険予知訓練を実施することで、ヒューマンエラーを防止して安全確認作業を怠るようなリスクを未然に防げるのです。
このことからも、工場で発生する労働災害を未然に防止するために、危険予知訓練は重要といえます。
安全確認手法の訓練になる
危険予知訓練は、安全確認を徹底させて日常に潜む危険因子を察知する潜在意識を養うための訓練です。
日頃から危険情報の刷り込みを潜在意識下に落とし込んでおけば、無意識化で危険を予防する意識が芽生えます。
そのためには、日常的に安全確認を徹底して行う安全確認手法の訓練が必要です。
危険情報を刷り込み、危険のポイントと行動目標を指差し呼称で顕在化することで、危険因子を潜在意識に刷り込ませます。
危険予知訓練によって、危険因子を察知できるようになれば、労働災害を未然に防げるようになるでしょう。
危険予知訓練の導入によって得られる効果とは?
さまざまな危険が潜む工場の仕事では、危険予知訓練を実施することが非常に重要です。
危険予知訓練を実施することで、どのような効果が得られるのかを確認して、導入を検討してみましょう。
危険予知訓練の導入によって得られる効果は次の通りです。
・危険に対する察知能力や集中力が高まる
・問題解決能力が向上する
・チームワークが向上する
それぞれの得られる効果を詳しく解説していくので、危険予知訓練の導入を検討する材料として参考にしてみてください。
危険に対する察知能力や集中力が高まる
危険予知訓練を導入することで、作業員の危険に対する察知能力や集中力が高まります。
なぜなら、KYTを実施すれば作業員が自主的に危険要因を見つけて、安全対策を意識しなくてはいけないからです。
今まで作業の安全性について考えてこなかった作業員も、KYTを通じて初めて安全性を考え直す機会を得られるでしょう。
自らの意思で安全に対して意識を高めることで、危険に対する察知能力や集中力が高まるのです。
危険予知訓練を導入して作業員の安全意識・危険対策の意識を向上させれば、労働災害を防いで作業の効率化を目指せるため、結果的に工場の生産性向上へとつながるでしょう。
問題解決能力が向上する
危険予知訓練では、「なぜこのような災害は発生したのか?」「今後、同じような災害が発生しないように対策するにはどうすればいいのか?」といった、災害対策を考える訓練があります。
作業員が自ら災害対策・労災防止を考えることで、イレギュラーなトラブルが発生した時に対応できる問題解決能力が向上するでしょう。
上司の指示で問題解決するだけの作業員ではイレギュラー対応ができず、万が一災害やトラブルが発生した際に対処できません。
そのため、危険予知訓練によって問題解決能力を向上させることで、作業中に発生したイレギュラー対応や工場内で起きたトラブル発生時にも、自ら考えて問題を解決できる能動的な思考力が養われるでしょう。
また、KYTを進めていく指導力も強化され、チームのリーダーシップも向上できます。
チームワークも向上する
KYTではラインメンバー全体で話し合い、危険予知・災害対策を講じるミーティングを行います。
普段、あまり発言しない作業員もKYTを通じて発言することで、ライン全体のチームワーク向上を目指せるでしょう。
ミーティングを通じてラインメンバーと話し合い、親睦を深めていけば、気楽に注意しあえる職場風土を築いていけます。
先輩・後輩関係なく注意しあえる良質な職場環境を築いて、職場全体の安全意識を向上させましょう。
チームワークの向上は、離職率低下・定着率向上にもつながり、結果的に工場全体の生産性を向上させられます。
危険予知訓練の進め方|KYT4ラウンド法
危険予知訓練を実行する際には、KYT4ラウンド法と呼ばれる方法で進めていきます。
KYT4ラウンド法は危険予知訓練の進め方として、代表的な方法です。
1R〜4Rまで段階を踏んで進めていき、安全意識の向上・危険要因を防止します。
一人ひとりが発言しやすいように、5〜6人程度の少人数のチームで進めていき、全員が主体的に危険予知訓練に取り組むことが大切です。
KYT4ラウンド法を実行する際には、事前に司会進行をするリーダーと書紀を行う作業員を決めておきましょう。
KYT4ラウンド法の進め方は、以下の手順となります。
・1R:現状の把握
・2R:本質の追求
・3R:対策の立案
・4R:目標の設定
それぞれのラウンド別に詳しく解説します。
1R:現状の把握
1Rでは「現状の把握」を行います。
つまり、KYT訓練用のイラストシートや、実際に作業を行っている職場環境を見直して、起こり得る災害や危険要因を話し合います。
大切なことはKYTメンバー全員が自ら危険要因について考えることです。
そのため、1RではKYTメンバーに危険だと思う要因を紙に書いてもらい、集計して話し合います。
実際に災害が起きた要因でなくても、災害が起こり得る要因でも問題ありません。
危険について考える思考力を身に着け、現状の作業環境・安全性を把握することが1Rの目的です。
2R:本質の追求
2Rでは「本質の追求」を行います。
1Rで挙げた危険要因の中で、最も危険だと思う要因をKYTメンバー全員で話し合います。
話し合いで追求する「危険要因の本質」は多数決で決めるのではなく、話し合いで論理的に選定しましょう。
1Rで挙げられた危険要因の中で、とくに危険だと思われる改善すべき要因を挙げていきます。
その中で一番改善すべき危険要因を定めて、職場環境に潜む危険の本質を追求していきましょう。
指差し呼称をして「〜なので〜になる、ヨシ!」と、危険要因を全員で指摘しながら確認してみてください。
3R:対策の立案
3Rでは、2Rで定めた「改善すべき最優先事項」に対する「対策立案」を行います。
2Rで定めた改善ポイントをチームで話し合いながら、「どうすれば危険を防止して、安全に作業ができるのか?」対策案を講じましょう。
チーム全体で話し合うために、リーダーがチームメンバー一人ひとりに意見を求めて、対策案を集計します。
集計した対策案の中から重要なポイントを集めて、課題を解決する対策を立案していきましょう。
4R:目標の設定
4Rは「目標の設定」を行います。
具体的には、3Rで定めた対策を基にして、今後行実行すべき重点実施項目をチーム全体で話し合いましょう。
重点実施項目は今後の行動目標となり、労働災害を防止するためにチームメンバー全員で周知して徹底します。
目標の設定が完了すれば指差し呼称で「~するときは~を~して~しよう ヨシ!」と、対策に対する重要実施項目を確認してください。
他にも工場の仕事で心がけるべき安全対策とは?
危険予知訓練以外にも、工場の仕事で心がけるべき安全対策はいくつかあります。
工場で働く際には、危険予知訓練の他にも以下の安全対策を実施しましょう。
・5S活動によって危険のない環境作り
・ヒヤリハットに気を付ける
それぞれ「5S活動」と「ヒヤリハット」について、知らない方は概要を確認して安全対策を徹底してください。
安全対策① 5S活動によって危険のない環境作り
5s活動を徹底すれば、危険のない職場環境を作れます。
そもそも5sは、下記5つのことです。
・整理
・整頓
・清掃
・清潔
・しつけ
職場環境を整理・整頓して、綺麗に保つことで、安心して働ける清潔で安全な環境を作れます。
職場にゴミや資材・工具などが散らかっていたり、油で床が滑りやすくなっていたりすると、転倒など労働災害につながる危険要因となるでしょう。
5S活動によって危険のない環境作りに励むことが、労働災害を防止する基本対策です。
安全対策② ヒヤリハットに気を付ける
工場の仕事で起きるヒヤリハットにも気を付けましょう。
そもそもヒヤリハットとは、大事には至らなかったが災害になる可能性があるヒヤッとした体験のことです。
転倒しそうになったけど何とか持ちこたえたり、機械に巻き込まれそうになったけど停止ボタンが作動して助かったりなど、工場で働いているとヒヤリハットがよくあります。
また、ヒヤリハットは「ハインリッヒの法則」と呼ばれる法則が関係しており、とくに大事にならなかったとはいえ見過ごしてはいけません。
ハインリッヒの法則とは「1:29:300」の法則で、「重大災害:軽症災害:ヒヤリハット」が密接に関わっていることを表す法則のことです。
ハインリッヒの法則では、1件の重大災害の影に29件の軽症災害と300件のヒヤリハットがあるといわれています。
つまり、ヒヤリハットで済んだ場合でも、後の29件の軽症災害や1件の重大災害につながる可能性があるのです。
そのため、ヒヤリハットが起きた危険ポイントを放置しておくと、後に重大災害を引き起こす可能性があるため、早急に改善するようにしましょう。
ヒヤリハットを防止することが、労働災害を防止することに繋がります。
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工場で働く際には危険予知訓練(KYT)によって、危険ポイントを洗い出して安全意識を向上させなければいけません。
さまざまな危険が潜む工場の仕事では、巻き込まれや転倒、転落、切れなどの労働災害が発生します。
足場が悪く危険な工具や機械が多い工場では、転倒ですら大きな怪我につながる危険性があるので注意が必要です。
危険予知訓練を導入して安全対策・危険ポイントの改善を行うだけでなく、日々の5s活動やヒヤリハット対策を徹底して労働災害を未然に防ぐ安全な職場環境を作ってください。
多くの工場では危険予知訓練を導入しており、安全対策を日々行いながら、働いている従業員がたくさんいます。
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