嘱託社員と契約社員の違いとは?雇用形態で何が変わるの?
2023年03月22日公開 2023年08月22日更新

目次
「嘱託社員」「契約社員」「派遣社員」の違いが明確に分かる方は少ないのではないでしょうか?
嘱託社員は定年退職後に再雇用されたり、専門的なスキルを有していたりする場合に雇用される形態です。
この嘱託社員には、契約社員や派遣社員にはないメリット・デメリット、特徴などがあります。
そこで今回は嘱託社員を中心に他の雇用約形態の社員と比較して紹介していきます。
「嘱託社員ってどんな雇用形態なんだろう?」「嘱託社員として働くか迷っている」という方は、本記事を参考にしていただければ幸いです。
嘱託社員の基本
まずは、嘱託社員の基本について下記3項目にわけて解説していきます。
- ・嘱託社員とは?
- ・「嘱託社員」と「契約社員」の違いとは?
- ・「嘱託社員」と「派遣社員」の違いとは?
嘱託社員の基礎知識を身につけていきましょう。
嘱託社員とは?
嘱託社員は、法律上で定義されているわけではありません。
しかし、厚生労働省の資料によると、嘱託社員とは「定年退職者等を一定期間再雇用する目的で契約し雇用する者。」とされています。
期間を限定して再雇用する非正規雇用の社員、と言った方がイメージしやすいかもしれません。
この嘱託社員には、2つのケースがあります。
- ・定年後に再雇用されるケース
- ・高度な専門知識・スキルが必要な業務を任されるケース
1つ目の定年退職後に再雇用されるケースでは、それまでの業績や勤務態度などが評価され、定年後も会社に貢献してほしいとの要望を受けて再雇用契約を結びます。
もともと社員として企業と労働契約を結んでいるため、労働基準法および最低賃金法の適用を受けることができるのが特徴です。
一方、2つ目の専門的な知識やスキルを有するケースでは、労働基準法が適応されません。
具体的には個人が企業から業務委託される、または請負契約などがあり、主な対象として医師や弁護士などが挙げられます。
「嘱託社員」と「契約社員」の違いとは?
嘱託社員とよく比較されるのが契約社員です。
ここでは嘱託社員と契約社員との違いだけでなく、共通点についても解説しています。
契約社員に関しても法律上の明確な定義はありませんが、厚生労働省によると「特定職種に従事し専門的能力の発揮を目的として雇用期間を定めて契約する者。」とされています。
つまり、嘱託社員と契約社員には下記2つの共通点があるのです。
- ・雇用期間が限定されている
- ・専門的な能力の発揮を目的としている
だからこそ、嘱託社員は契約社員の一種と認識されているのでしょう。
業種によっては嘱託社員のことを契約社員と呼んでいる企業も多いようです。
一方、契約社員と嘱託社員には「労働時間」という大きな違いがあります。
ほとんどの企業は、契約社員の雇用条件にフルタイム勤務を含めているのが実情です。
これに対し、嘱託社員はフルタイムかパートタイムかを選択できる仕組みになっています。
「嘱託社員」と「派遣社員」の違いとは?
嘱託社員と派遣社員は、非正規雇用という点で共通しています。
大きく異なるのは「雇用主」と「給与」の2点です。
嘱託社員が雇用主の会社と労働契約を結ぶのに対し、派遣社員は派遣会社と契約を結ぶことで働き先へと斡旋されます。
つまり、派遣社員は「雇用契約先」と「労働先」が一致していないのです。
さらに給与に関しては、嘱託社員よりも派遣社員の方が低くなる傾向があります。
ほとんどの企業では、嘱託社員に対してボーナスや資格給などの手当を支給しています。
一方、派遣社員は「無期雇用派遣」にならない限り、基本的にボーナスはありません。
嘱託社員の権利とは?
上記では嘱託社員と契約社員・派遣社員を比較し、共通点や違いがあることを紹介してきました。
なぜ共通点が多いのに賃金や手当に差が生じているのか、疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、嘱託社員の権利について下記の2項目にわけて解説していきます。
- ・賃金格差の合理性
- ・手当の格差の合理性
賃金格差の合理性
正社員の方が嘱託社員よりも労働時間が長かったり、業務内容の負担が大きかったりする場合、正社員と嘱託社員の間に賃金格差などがあっても問題ありません。
しかし、2020年4月1日に施行されたパートタイム・有期雇用労働法では、正社員と非正規社員間での不合理な待遇差が禁止されています。
具体的には、均衡待遇規定と均等待遇規定によって労働環境が整備されたのです。
均衡待遇規定では「職務内容、職務内容・配置の変更の範囲、その他の事情の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止するもの」とされています。
また均等待遇規定では「職務内容、職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的取り扱いを禁止するもの」とされています。
つまり、正社員とそれ以外の社員とで立場的な観点から待遇に差をつけることが禁止されているのです。
手当の格差の合理性
正社員と嘱託社員とでは、手当によって差をつけることが認められているものと、認められていないものに分けられています。
ただし、手当が設定されている理由によって手当の格差を設けることが妥当か否かが判断されたり、格差を設ける場合には正当な理由の説明が義務付けされていたりと、企業に対し厳密なルールが設けられているのです。
- ・ボーナス支給額に差を設ける場合:正当な理由を説明する義務
- ・退職金を不支給にする場合:就業規則にその旨を明記する義務
このよう、手当に格差を設けることが違法である場合と合法である場合、そして一定の条件下であれば認められる場合に分けることができるのです。
嘱託社員の「契約・労働条件」とは?
ここでは嘱託社員の雇用期間や給与、ボーナス、退職金、各種手当といった契約・労働条件に関して紹介していきます。
- ・嘱託社員の「雇用期間」
- ・嘱託社員の「給与」
- ・嘱託社員の「ボーナス(賞与)」
- ・嘱託社員の「退職金」
- ・嘱託社員の「通勤手当・皆勤手当」
- ・嘱託社員の「住宅手当・扶養手当」
- ・嘱託社員の「昇給・昇格」
- ・嘱託社員の「労働時間」
- ・嘱託社員の「有給休暇」
- ・嘱託社員の「保険」
実際に嘱託社員たちがどのような条件下で働いているのかを知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
嘱託社員の「雇用期間」
高齢者雇用安定法の改正によって、さまざまなルールが変更されました。
定年退職する社員を嘱託社員として再雇用する場合、再雇用を希望する社員に対しては65歳まで就業機会を確保することが、すべての企業を対象に義務付けられています。
ちなみに、定年退職後の社員に対して設けられている雇用期間の上限は、最長5年までです。
ただし、嘱託社員の雇用期間に関する規則として、無期転換ルールがあります。
無期転換ルールとは、厚生労働省の資料によると「有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール」です。
同じ雇用先で働き始めて6年目になると、該当する嘱託社員は契約期間を定めない労働契約を申請する権利が与えられます。
嘱託社員の「給与」
嘱託社員の給与に関しては、不合理に低い賃金を設定することが違法とされていますが、正社員との労働時間や業務内容やその責任に違いがある場合はこの限りではありません。
つまり正当な理由があれば賃金の差が設けられていても問題ないのです。
ただし、2020年から実施された同一労働同一賃金という施策では、正規雇用者と非正規雇用者との不合理な待遇差の解消を目指すものとされており、同じ労働内容であれば雇用形態に関わらず同じ賃金にするべきであるとされています。
嘱託社員の「ボーナス(賞与)」
嘱託社員の場合、ボーナスは「支給される」「正社員よりは低額で受け取れる」「支給されない」という3つのケースに分類されます。
ボーナスが正社員と同様に支給される場合は、正社員と同じ労働時間、労働内容、責任など同じ労働条件下にある必要があるため非常に稀なケースと言えるでしょう。
嘱託社員の場合、ボーナスを正社員よりも低額で受け取れるか、もしくはボーナスが支給されないケースがほとんどです。
嘱託社員の「退職金」
企業は、必ずしも嘱託社員に退職金を支払う必要がありません。
支払い義務が生じないのは、就業規則に退職金を支給しないという旨を明記している場合や就業規則上は退職金が支給されるとしていても別途嘱託社員に対する項目が設けられている場合などです。
また、定年退職後に再雇用されて嘱託社員になった場合、退職金が支払われていることがほとんどなため、改めて退職金が支払われることは非常に稀なケースになっています。
嘱託社員の「通勤手当・皆勤手当」
通勤手当や皆勤手当は、嘱託社員と正社員で同じ待遇を享受することができます。
なぜなら、通勤手当や皆勤手当における支給の格差を設けることは違法とされているからです。
通勤手当や皆勤手当などは、社員全員に対して金銭的負担の軽減し、より多くの出社数を確保するのが目的なので、不合理な格差は認められていません。
嘱託社員の「住宅手当・扶養手当」
住宅手当と扶養手当について、嘱託社員と正社員の間に差を設けるのは基本的に適法とされていますが、例外もあります。
これは同一労働同一労働の原則に住宅手当と扶養手当に関することが述べられていないためです
実際の裁判では、結果が適法・合法に分かれていますので、司法の判断を待つ必要があります。
嘱託社員の「昇給・昇格」
同一労働同一賃金の原則のもと、同じ労働内容の場合は正規雇用者と非正規雇用者の間での格差を設けることを禁止しています。
全く同じだけの労働時間、業務内容をこなしているにも関わらず、正規雇用者のみを昇給・昇格させることは認められていないのです。
とはいえ、嘱託社員の場合は、そのほとんどが正社員と労働内容や労働時間に差があるため、昇給や昇格が無くても不合理な格差と見なされません。
就業規則に「嘱託社員(契約社員)には昇給・昇格の機会がない」と明記している企業も多いようです。
嘱託社員の「労働時間」
正社員と異なり、嘱託社員の多くはフルタイムで働くわけではありません。
パートやアルバイトと同じように、シフト制や時短勤務となっています。
この労働時間に関しては、契約時の就業規則に明記している企業がほとんどです。
また、やむを得ない残業で労働時間が延びてしまった場合は、たとえ嘱託社員であっても時間外労働手当を受け取る権利があります。
嘱託社員の「有給休暇」
嘱託社員にも、正社員と同様に有給休暇を取得することが可能です。
嘱託社員の場合、入社後6か月が経つと有給休暇が発生します。
ただし、この有給休暇を取得するためには週の所定労働日数が4日以上、週の所定労働時間が30時間以上という2つの条件を満たさなければなりません。
嘱託社員の「保険」
嘱託社員であっても保険に加入することは可能です。
ただし、定年退職後の再雇用時に就業時間を減らした場合などは保険の適応外になってしまいます。
ここでは健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険・労災保険について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
健康保険
健康保険は、嘱託社員でも75歳までであれば基本的に加入することができます。
厚生労働省によれば、嘱託社員は以下の5つの要件を満たした場合、新たに社会保険の対象者となります。
出展:厚生労働省
ただし、定年退職後の再雇用時に就業時間が短くなっていた場合、健康保険の対象外になってしまうこともあります。
介護保険
介護保険は、嘱託社員であっても65歳になるまでは加入の義務があります。
介護保険は社会保険と同様に給料から天引きされ、雇用主が5割を負担しています。
ただし、健康保険で紹介した5つの要件を満たしていない、もしくは定年退職後の再雇用時に以前よりも労働時間を減らしている場合などは、加入する義務が生じません。
厚生年金保険
70歳になるまでは、嘱託社員であったとしても厚生年金保険に加入する必要があります。
他の保険と同じく、給料から天引きされます。
例外として、下記いずれかに該当する方は、70歳にならずとも厚生年金保険への加入義務は生じません。
- ・健康保険の章でご紹介した、5つの要件を満たしていない方
- ・定年退職後の再雇用時に、以前よりも労働時間を減らした方
雇用保険・労災保険
これまで紹介してきた保険と同様に雇用保険も給料から天引きされ、64歳までは適応対象となります。
65歳以上になった嘱託社員でも、高年齢被保険者として雇用保険の適用対象になります。
ただし、前述した5つの要件を満たさない場合や、定年退職後の再雇用時に以前よりも労働時間を減らした場合などは、対象から除外されますので注意が必要です。
ちなみに、労災保険は年齢や雇用条件に関わらず加入の対象となりますが、給料からは天引きされません。
嘱託社員として働くメリット
ここからは、嘱託社員として働くメリットについてご紹介します。
- ・慣れ親しんだ職場で働ける
- ・体力に合わせて労働時間が調節できる
- ・培ってきたスキルを活かせる
- ・正社員ほど責任が重くない
- ・定年後も収入が得られる
・慣れ親しんだ職場で働ける
職場環境が新しくなると、人間関係や生活の変化に対応できず、ストレスを感じる方も多いようです。
その点、嘱託社員として再雇用の契約を結べば、職場の変化に伴う負担を軽減でき、これまでの人間関係や業務を引き継ぐことができます。
このように同じ環境で働き続けることができるのは、転職などにはない嘱託社員ならではのメリットと言えるでしょう。
体力に合わせて労働時間が調節できる
嘱託社員として雇用契約を結ぶ際、労働条件が見直されます。
本人と会社側が同意すれば、これまでと同様にフルタイムで働くことも可能ですが、ほとんどの嘱託社員は労働時間を減らしているのが実情です。
体力やワークライフバランスに合わせて出勤日を調整したり時短勤務にしたりと、労働時間を調整できるのは嘱託社員として働く大きなメリットになります。
培ってきたスキルを活かせる
嘱託社員として働く場合、職場や業務内容が大きく変化しないので、これまで身につけてきたスキルや経験を引き続き活かすことができます。
会社側にとっても新しく人材を補充して1からノウハウを身につけさせる必要がないため、金銭的・時間的コストを削減できるというメリットがあります。
正社員ほど責任が重くない
正社員から嘱託社員になることで、業務などに対する責任の度合いが低くなります。
責任が軽くなるのに比例して業務内容も変化しますが、後輩や部下の育成に専念するなど、今までとは違ったやりがいを見いだせるのも嘱託社員として働く魅力です。
定年後も収入が得られる
定年退職で職を退くと、同時に収入も0になってしまいます。
たとえ時間が余っていても家計に余裕がなければ、第二の人生を謳歌することは難しいでしょう。
その点、定年退職後も嘱託社員として働けば、時間の使い道に困ることなく、安定的に収入を得ることができます。
嘱託社員として働くデメリット
続いて、嘱託社員として働くデメリットについて解説していきます。
- ・契約更新されるとは限らない
- ・契約更新されるとは限らない
- ・正社員と同レベルの待遇は望めない
- ・仕事に慣れ過ぎて夢中になれない
契約更新されるとは限らない
嘱託社員として働く場合、企業と従業員は有期契約によって結ばれるため、必ず契約が更新されるとは限りません。
会社の経営状態や嘱託職員の働き具合によっては、契約更新時期に職を失う可能性があります。
契約期間満了による退職は自己都合となる
嘱託社員は有期契約のため、特別な事情がない限り契約期間内での退職は原則認められません。
これに伴い、嘱託社員が契約満了時に退職する際は自己都合退職となります。
自己都合退職には失業給付金の受け取りまで期間が空いてしまうなど、デメリットがあることを覚えておきましょう。
正社員と同レベルの待遇は望めない
嘱託社員には正社員よりも責任・業務の負担が軽い分、給与が安いなど待遇面のデメリットがあります。
このほか、昇給・昇格もほぼ望めないのが実情です
仕事に慣れ過ぎて夢中になれない
嘱託社員として働くことで、これまで築いてきた人間関係や積み上げてきたスキル・経験を引き継いで活かすことができます。
その反面、職場環境の変化が小さいからこそマンネリ化してしまい、「仕事に熱中できなくなった」という方も多いようです。
新しい仕事にチャレンジしたいなら派遣がおすすめ!
嘱託社員以外にも派遣社員についても紹介してきました。
派遣社員であれば、派遣会社が従業員と働き先とを仲介しているため、何かトラブルが生じても代わりに対応して貰えます。
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今回は嘱託社員と契約社員の違いについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
働き方だけでなく、業務内容や待遇などさまざまな面で違いがあることが、お分かりいただけたかと思います。
嘱託社員という働き方が自分に合っているのかどうか見極める際、本記事の情報を参考にしていただければ幸いです。
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